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1.かけがえのない師との出会い
2.納得がいくまで壊してやり直す
3.豪快さと細部へのこだわり
4.骨格は骨太でも精神は数寄屋
5.木材への強いこだわり
6.和洋のセンスを自在に融合
7.趣味の山と絵画が生んだ親交
8.和洋と近代建築の融合
エピソード3
豪快さと細部へのこだわり
~秀三作品を特徴づける材料と技法について~
「住友那須別邸」階段ホール。
手斧なぐりで仕上げた梁や柱で構成された
ダイナミックな空間
秀三の作品には、それを特徴づけるいくつかの工法・技法があります。以下、代表的なものをご紹介します。
項目をタップすると詳細がご覧になれます。
a.栗材を用いた木造架構
栗材は耐久性が高く、木目もきれいですが、反面、変形しやすく、固くて造作材には適していない欠点があります。また、栗材で造作材として使える大きさのものは滅多にみられません。しかし、秀三が大架構の建物を構築する上で、栗材は最適の用材でした。
b.オイルステイン仕上
秀三は、木材の木肌をオイルステインで染色する意匠を好みました。年を経るごとに素朴な趣きを深める特徴が、和洋折衷の田舎家風建築に絶妙の風合いを与えています。
c.漆喰引き摺り仕上
漆喰の引き摺り仕上げは、職人が木鏝の塗面を軽い曲面で作り、仕上げ漆喰を細かい波型に仕上げる技法です。
秀三好みの引き摺りは、木目のように穏やかで美しい波形でした。
d.ラフコート塗装仕上
ラフコート仕上げは、下地材であるパテを厚付けし、パテが乾く前にヘラやコテ等で形置きし、最後に表面を着色する技法です。
秀三が採用したラフコートは、小幅ヘラの縦引きや、通常のヘラでパターン付けしていく技法でした。塗料は油性であるため、経年と共に質感を増します。
e.コンビネーション塗り仕上
数種類の異なった色を配色よく重ね、その組み合わせで美しさを出す塗装仕上げの技法です。プラスター塗りの壁下地に、同系色で色濃度の薄い塗材を一度塗り、乾いてから少し濃い塗材を塗り重ね、柔らかくもみほぐした和紙で吸い取らせる方法や、モミ紙やちぎったスポンジで淡い色を壁に押し当てながら塗り重ねていく方法があります。これにより継ぎ目のない一面壁が完成します
f.荒木ペンキ仕上
秀三の建築で多用された内外装仕上の技法の一つで、丸鋸旋盤で製材した杉の丸太曳板を使用します。
外装に用いる場合は横重ね張りし、板面は荒木のままです。ワイヤブラシで軽く目起こしして下地をつくり、遅乾性オイルペンキを塗った上に軽くオイルステインの刷毛をあてます。素朴で落ち着いた雰囲気に加え、耐久性の高さが特徴です。
内装に用いる場合は、縦張りし両サイドに小幅な目地を入れます。化粧面は外装と異なり、ワイヤブラシで縦目を削り入れ、グレー系の塗料で仕上げます。
天井材として用いる場合は、小幅の杉板正目を粗削りした上で、ワイヤブラシで目に合わせて深めに削り、同じくグレー系の塗装で仕上げます。
g.土間床の栗ブロック敷
厚さ10センチ程の幅、長さの異なる方形の栗の無垢材を、変形しないよう乾燥させた後、板目を見せるようにして、から練モルタルの上に叩き込みながらレベルを揃えてブロック状に敷詰め、モルタルで目地を詰める工法です。秀三は玄関の踏み込み土間に多様 しています。
山荘などの大きな土間では、ラフなサイズと目地で雰囲気を和らげ、建物によっては、小ぶりなブロックを緻密にならべることもありました。
化粧面をオイルステインで塗装した仕上がりは、とても靴のままで入るのを躊躇してしまう美しさです。
h.朱墨入れ研ぎ出し
主に玄関の床仕上げに使われた技法で、研ぎ出し床は、種石を混ぜたセメント系の材料を敷ならし、表面を研いで磨きあげるものです。
朱墨入れの技法は、この研ぎ出し床のひとつで、灰墨の研ぎ出し材を床に厚塗りし、水の引き際に大釘又は竹箒等で数本ずつの筋を縦横に引き模様をつけます。この筋目に紅ガラで朱に着色した白セメントを摺込み、均し、乾燥後に研ぎ出すと、黒い面にチリチリしたきれいな朱色の筋目が現れる上品な仕上がりとなります。
i.ハンマーワーク・フェロネリ仕上
ハンマーワークは、ヨーロッパの伝統的手法で、鉄を赤く熱して、ハンマーでたたきながら細工する手法で、秀三はこの仕上げの金具を照明器具や建具のアクセント、暖炉の飾り金具などに多用しました。
秀三と共にこれを制作したのは実弟・文雄氏(佐藤鉄工社長)でした。
j.自作の照明器具や木製家具
秀三は、自身の建築において使う照明器具・木製家具を、建物に合わせて自らデザインしました。
かつて、佐藤秀工務店には木製家具の制作を担当する木工所がありました。秀三のこだわりを表わす一例といえます。
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